セラピストの教科書

柔らかいしこり・粉瘤(ふんりゅう)は施術できる?

もしかしたら施術を断らなければいけないかもしれない?意外と多い粉瘤(ふんりゅう)のあるお身体の施術・カウンセリング対応、どうしてますか?

タオル毛布をめくってみたら、お客様のカラダに大きくて柔らかいしこりがある。

お客様からは「痛いので、そこだけ避けてください。」と言われたけど、お身体を見たら炎症している。

マッサージ中にニキビの膿?のような白いドロッとしたものが飛び出してきたけど、、、これってすごく大きなニキビ?

お客様は良いって言ってるけど、施術する側からしたら気になるんだよね。

困った経験は、ありませんか?

柔らかくて、近くをエフルするとちょっと動くあの膨らみ。もしかしたら粉瘤(ふんりゅう)かも。お客様は「気にしないで」っていうけど戸惑いますよね。

この記事では、実際に粉瘤をお持ちのお客様にどう対応しているのか、わたしなりの見解と対応をまとめてみました。

粉瘤がある時のカウンセリングや施術対応について書いていきます。

柔らかいしこりのような見た目。粉瘤(ふんりゅう)については、こちらでまとめています。

柔らかいしこり・粉瘤(ふんりゅう)とは?

上記の記事を読んだ上で読み進めていただくと、より理解が深まると思います。

粉瘤(ふんりゅう)があるお身体への対応

粉瘤とは、一般に表皮嚢腫(ひょうひのうしゅ)のことを指す。表皮嚢腫は良性の腫瘍である。ということについては以前のまとめ記事で紹介してきました。

この記事でも粉瘤=表皮嚢腫として解説していきます。

わたしの過ごしてきた職場や個人でサロン運営をしている方々の集まりなど、「こんな時どうしてる?」を聞いても、なかなか具体的な対応を聞ける機会ってなくて。そばにも解決できる人がいなかったので、自分なりにどうしていくのが良いのか日々試行錯誤の連続です。

ここで紹介することが正解というわけではないと思いますが、わたしがセラピスト歴22年の中で、実際に経験し、調べたり、対応した中で培ってきたものをまとめてみました。

粉瘤(ふんりゅう)ができやすいパーツ(お身体の部位)

粉瘤は、毛穴のあるところであれば、どこにでもできる可能性があります。
わたしが個人的によく見かけるのは、背中です。

  • 背中上部:脊柱起立筋上、肩甲骨近辺、僧帽筋上
  • 腰:脊柱起立筋上
  • 頭部:頭皮、耳の後ろ
  • 顔:頬、耳

見た目はしこり、柔らかくて、施術で付近を通ると若干動きます。
横を通ると動くので、避ける分にはそれほど困ることはありません。

真上を通ると圧迫刺激で破裂や炎症を引き起こすこともあるので、注意します。

お客様も自覚のないことが多い粉瘤。カウンセリング時にお客様から教えて頂けないこともありますし、痛みや炎症がある場合でもお客様からは「そこだけ避ければ大丈夫。」と言われてしまうことも。

どんなことを踏まえて対応したら良いのか、実際の具体例も交えて紹介していきたいと思います。

施術の際の注意点

粉瘤は袋状組織に老廃物などの内包物が溜まったもの。表皮嚢腫のことを指すのが一般的です。良性の腫瘍とされているので、粉瘤そのものをセラピストやエステティシャンがケアすることはできません。お客様が、粉瘤をどうにかしたいと考えている場合には、医療機関へつながる必要があります。

また、粉瘤の多くは、痛みがなかったり、手の届かない場所にできていることもあるので、お客様自身も自覚がないことがあります。

もしかしたら、お客様は「このシコリはなんだろう?」「悪性で手術が必要になったら怖いから放っておいてる」という場合もあるかもしれません。

わたし達セラピストには診断はできませんが、カウンセリングや施術の際のお声がけ次第では、早期に自覚することができたり、よくわからない故の不安を解消して差し上げられるかもしれません。

間違っても、「シコリがありますね!」なんてデリカシーのないことを言わずに、お客様の心に寄り添いつつ、今回の施術をより満足度の高い時間にしたいものですね。

粉瘤(ふんりゅう)が小さく、触っても痛みがない場合

粉瘤は、袋状の組織が肥大していることを除けば、基本的に黒ニキビ・白ニキビと近い成分のもの。なので、表皮嚢腫だからといって過剰に怖がる必要はありません。
炎症や痛みがない場合は、直圧を避けて施術が可能です。

ですが、あくまで良性の腫瘍に分類されますので、施術としてセラピストが手を加えることは避けるべきです。

施術で意識していること

粉瘤の多くは、良性の腫瘍。なので痛みや炎症がなく、触ると動く柔らかいしこりです。施術を行う際には、直圧や母指圧などの刺激を避ければ、支障はありません。

表皮・真皮層に存在するので、触ると動きます。リンパや筋肉にアプローチしたい場合は、皮膚を少しずらすようなイメージで触れることで粉瘤に負荷をかけずにトリートメントすることもできます。

粉瘤のイメージとしては、ボクシングの練習で使うスパークリング用の小さなボールみたいな感じでしょうか。毛穴の入り口に紐付き、涙型の袋状になっていて、毛穴を起点に上下左右に袋状組織が動きます。内包物が出切ると袋はしぼみますが、また内包物が溜まると風船のように膨らみます。

組織成分は毛包成分と似ていて、内包物や症状はニキビと近いものがあります。
わたしがこれまでみた中では、大きなものだと母指丘くらいのものがありました。

粉瘤(ふんりゅう)が炎症している・痛みを伴う場合

炎症している場合や、痛みを伴う場合、どのような対応があるでしょうか。粉瘤が炎症している場合の見た目は、大きく2つあると思います。

  • ひとつは患部が赤ピンク色になった、赤ニキビのような状態。
  • もうひとつは、皮膚が爛れた(ミミズ腫れのような)状態。

また、粉瘤の摘出手術後も、皮膚が赤味のある状態のまま数年経つ場合もあります。

いずれにしても赤味のある箇所・炎症している箇所はお手入れを避けた方がいいでしょう。上記を踏まえて、どの範囲まで施術をするべきなのか、判断が迷うところではないでしょうか?

お客様は、赤味(痛み)のある場所だけ避けてくれれば良いって言ってるし?

でも、手は当たっちゃうよなぁ。母指圧や直圧だけ避ければいいのかな?

いざ施術を始めてみると、こんな風に戸惑ってしまいませんか?

こんな時、まずセラピストが押さえておくべきポイントは、施術を行うリスクと許容範囲の指針だと思います。

わたしが調べたり経験した事例も踏まえて施術のリスクと、目安としている指針を次の章で書いていきます。

施術が困難かもしれない場合の対応

カウンセリング時に、お客様から「粉瘤があるので、そこだけ触らないでください。」「背中が赤くなっていて、痛いので、そこだけ避けてもらえれば大丈夫です。」と言われることありませんか?

お客様は良いって言ってるけど、施術する側からしたら気にしないわけにもいかない。お客様が思うほど部分的な問題でないことは、セラピストなら誰でも認識しているでしょう。よくわからないケースに当たって、不安に思ってしまうのは自然なことです。

一方で、お客様はお疲れを癒しに、またはキレイになりたくてきている。お時間もお金もかけて来店されている。着替えも済ませて、「いざ!」と思っているお客様の心情に水を差すことになるから、「断るのは気が引ける」という気持ちもわかります。

「できない」とお伝えして、万が一、ご説明してもご理解いただけずお怒りになって、クレームやトラブルになったらどうしよう!という不安もあるかもしれません。

お客様のお気持ち、その後起こるであろうリスク、色んなことが頭をよぎるからこそ、施術ができないかもしれない時のお伝えの仕方は難しいですよね。

まずは、粉瘤で炎症・痛みがある状態での施術リスクについて考えていきましょう。

炎症の持つリスク

まず、粉瘤の患部が痛んでいたり、炎症している場合に、お身体の中では何が起こっているでしょうか?

炎症の原因

袋状の組織である嚢腫壁(のうしゅへき)が圧迫刺激などにより破れ、内包物である角質・皮脂・垢といった老廃物が皮下組織に漏れ出し、リンパ球が瀬戸際で菌や老廃物の侵入・繁殖を押さえ込もうと応戦している状態。

施術を行うリスク

粉瘤により、お客様の体内で上記のようなことが起こっているため、痛み・炎症(赤味)を伴う状態になっています。
そこに対して施術を行うことは、どんなリスクがあるのでしょうか?

わたしは4つのパターンがあると思っています。

①毛穴からの雑菌が侵入するリスク

毛穴から雑菌が入り込み、内包物を餌として繁殖、結果として炎症につながるケースが考えられます。
施術に使用するベースオイルは油性。内包物も皮脂をベースとしているため、親和性が高く、馴染みやすい。つまり、雑菌が侵入するリスクがついてまわります。

これは、炎症が起きていない場合でも、黒ずんだ角栓が柔らかくなり取れる。角栓が取れることで、内包物が毛穴から飛び出してくる。といったケースは度々遭遇します。

②毛穴から内包物が出てくるリスク

施術に使用するオイルで黒ずんだ角栓がふやけてポロっと取れることがあります。角栓が取れた毛穴からは、粉瘤の近くを通るたびに、袋状組織が刺激されるため内包物の角質・皮脂・垢といっ老廃物の白いドロッとしたものが出てきます。

③嚢腫壁(のうしゅへき)が破裂・炎症を引き起こすリスク

施術による圧迫刺激により、袋状組織である嚢腫壁(のうしゅへき)が破れて、体内に内包物である老廃物が漏れ出し炎症が起こるケース。
嚢腫壁は表皮・真皮層にあるため、嚢腫壁が破れてしまうと皮下組織に雑菌や老廃物が漏れ出し、リンパ球がそれに対抗するため、炎症が引き起こされます。

仮に、粉瘤の真上を直圧で刺激していなくても、内包物がパンパンに詰まっている場合や袋状組織が薄くなっている部分など、外からは判断のつかない部分が破損する可能性については、否めません。

④出血するリスク

施術により血流の流れが良くなることで、破れていた嚢腫壁の内側に血流が流れ込み、毛穴からの出血につながるケース。
施術に入る前に嚢腫壁が破れていても・いなくても、血流の増加によって血液やリンパ液が薄くなった嚢腫壁を刺激し、破れてしまうこと。それに伴い血液やリンパ液が毛穴から体外に漏れ出すことがあります。

血流が良くなって出血するイメージが湧かない方もいるかもしれません。
例えば、マラソンした時に歯茎から血が出ることがあるのも、血流が良くなることで、血管壁の弱いところが血圧に耐えられなくなり流血します。

ああいったことが、粉瘤の毛穴の真下の皮下組織で起こり、破れた嚢腫壁を抜けて毛穴から漏れ出してくるのです。

 

このリスクを踏まえた上で、お客様にもセラピストにも安全に施術を行うには今回どんなことが提案できるのかを考えていきましょう。

施術範囲を考える指針

ここまでに、粉瘤が小さく、炎症もないケースと、炎症中の体内で起こっていること、炎症の持つ場合の施術リスクについて紹介しました。

これらのことを踏まえた上で、今回どんな施術を行うのか、許容範囲を考える必要があります。

施術範囲を考える時のわたしなりの指針

前述のとおり、粉瘤があるから必ず施術ができないというわけではありません。

多くの場合、粉瘤があっても施術は可能ですし、施術後に破裂したり体内で炎症が起きたケースには、わたしはまだ一度も遭遇していません。

なので、しこりがあるなと思っても、炎症や痛みがないことを確認して、施術時に直圧を避けること、これがわたしなりの指針です。

炎症がある場合は、今お客様のお身体で起こっていること、施術を行う上でのリスクについて説明します。その上で同意を頂けるのであれば、施術を行います。場合によってはお客様からの強い要望で施術を行うこともあるでしょう。
その時は同意書を作成し、ご署名をいただくのも良いでしょう。

粉瘤のケースではありませんが、過去に一度だけ、即席の同意書をその場で手書きして、ご署名いただいたことがありました。

セラピストにとって大切なのは、今お客様のお身体がどういう状態なのかを知ろうとする姿勢と、より良くなるための提案をする心構えだと思います。

 

セラピストしていると、たくさんの身体と出逢います。同じ方でも、ずっと同じコンディションでいることはないです。一期一会のその時を大切にしたいなと常々思います。

今回、力及ばず悔しいと思うケースも、次に遭遇したら同じ後悔をしなくて良いように、落ち込んでるよりチャンスと思って学んでいきたい。あなたもそんな志でいたから、この記事に巡り合ってくれたのではないでしょうか?

粉瘤のお客様に対して、わたしがこれまで接してきた具体例も紹介していきたいなと思っています。